TANSANFABLOG

TANSANのブログです。

ボードゲームのアートディレクションについての実例

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みなさん、こんにちは。

この記事はBoard Game Design Advent Calendar 2015の16日目の記事として書かれました。みんなでボードゲーム作りのあれこれを書く企画です。

 

普段はボードゲームの見た目を作る仕事が多いので、それについての記事を書きます。普段の仕事はコチラをご覧ください→www.tansan.co

 

今回の記事はボードゲームの見た目を作るとき重要になるアートディレクションについてです。

アートディレクション?なにそれ?と思った方もいるかと思います。

簡単に定義するとボードゲームグラフィック/イラスト/コンポーネントのデザインを使ってどのような効果を設計、判断するかということです。

このアートディレクションボードゲームのルール以外によってもたらされる面白さの方向に影響を与えます。

では、そんなアートディレクションをやっている人がどこにいるのかというとだいたい3つの分類の人たちが兼任したり分業したりしながらやっていることでしょう。

 

・ルールを作った人

・イラストやグラフィックを作った人

・パブリッシャー(販売元)の担当の人

 

僕達の仕事でもアートディレクションをしたり、しなかったりとその時々で関わり方が違います。

 

ここでは誰がやるべきなのかというような話ではなく、アートディレクションをちゃんと意識しているのが良いという話です。

特に、最終判断をする方がきちんとアートディレクションについての視点を持っていることが重要でしょう。

ルールを作った人が理由なく配置したカードモックを見て、デザインやイラストの人がそのまま作ってしまった結果、なんか遊びにくいなぁ、なんかルールとグラフィックデザインが咬み合ってないなぁということを出来る限り減らすことで皆が幸せになれるでしょう。

 

では早速アートディレクションの話を進めましょう。

ちなみに、アドベントカレンダー13日のプレイを簡単にする方法としてのボードゲーム化|yio|noteや15日のSaashi & Saashi — ボードゲームのテーマ選択についてに内容が近いと思いますので、こちらもあわせて読んでみてください。

2014年のアドベントカレンダーで書くつもりで、怠けて書かなかった「ゲームを演出する役割」についての記事になるので、去年に読んでた皆様には1年越しの記事になります。すみません…。

 

アートディレクションのはたす役割について

アートディレクションには2つの役割があります。

 

・プレイアビリティを向上させる役割

・ゲームを演出する役割

 

この2つは切り離して考えてはいけません。この2つを行ったり来たりしつつ、いい塩梅を探るのがアートディレクションの醍醐味ではないでしょうか。

 

それではまず、簡単なアートディレクションの実例として、日本語版をリメイクしたペンギンパーティを見ていきましょう。ペンギンパーティの説明についてはコチラを→http://tansan.hatenablog.jp/entry/2015/06/16/183420

ここから、これはこういう意図だよというのが続きます。 

 

アートディレクションをするにおいては指針の設定が不可欠です。

今回はこのような指針を設けました。「それなりにリアリティのあるペンギンパーティ」です。

それぞれの行為に何らかのわかりやすい意味をもたせようという試みです。試みというと大げさですね、通常のボードゲームではよくあることだとは思いますが。

 

ペンギンパーティのイラストはgooさん(http://gooillustration.jp/)にお願い致しました。

リアリティのあるペンギンのイラストを描かれていたことが理由です。gooさんはボードゲームがあまり詳しくないということで、こちらでアートディレクション全般を担当させていただきました。

 

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 左がドイツ版のペンギンパーティ、右が完全日本語版のペンギンパーティ

 

パッケージのイラストが変わっていますね。

カードはどうでしょうか。

 

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上列がドイツ版のペンギンパーティ、下列が完全日本語版のペンギンパーティ

 

こちらもイラストが変化していますが、どちらもかわいいですね。

イラスト以外に大きな変化は見られません。

 

しかしペンギンパーティで大きく変わったものがあります。

チップです。

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左がドイツ版のペンギンパーティ、右が完全日本版のペンギンパーティ

 

金と銀のチップだったものが赤と黄のシャチのイラストのチップになっています。

このチップはマイナス点を表現するもので、持っているほど負けてしまいます。

どちらもマイナス点を表現しています。

しかし金や銀はお金に使われる色なので、どちらかというともらって嬉しい色なので、マイナス点の表現にはふさわしくないと考え、ペンギンにとっての天敵であるシャチを描き、赤点、赤字のようなマイナスを表現する赤と危険を表す黄(とシャチの黒)にすることで、マイナス点であることを表現するようにリメイクしました。赤いチップは黄のチップ5個分を表しています。

 

このチップの構成要素は

 

・赤と黄

・大と小

・シャチが水中にいるのと飛び出している

 

となります。それぞれの要素にはこういう役目があります。

 

・赤と黄(識別と呼称のため)

・大と小(それぞれで表すマイナス点の違いの表現のため)

・シャチが水中にいるのと飛び出している(世界観の構築とマイナス点であることの表現)

 

色がなければ呼称くく。プレイアビリティは下がるでしょう。例えば色がなかった場合、「大きいチップ」「小さいチップ」と呼ばれるかもしれません。

大きさというのは相対的なものですので、それぞれが比較できる状態でなければどちらが小さくて大きいのはわからないでしょう。

 

プレイアビリティを高めれるのがよいのか、となるとそうではありません。

最低限のプレイアビリティを担保し、そこから、演出とプレイアビリティの良い塩梅を探すことが、アートディレクションと言えるでしょう。

 

たとえば、マイナスチップのプレイアビリティをさらに高める方法として黄のチップに、数字の赤のチップにを書く方法があります。

これならばチップがマイナスのいくつを示しているのか明白になるため、プレイアビリティを高められるでしょう。

-1、-5としても良いですね。

しかし、そうした場合、イラストのどこかに数字を配置しなければいけないことになり、小さめのチップにはやや辛いところです。数字を目立たせるためにイラストを控えめにすることも必要でしょう。

チップを大きくすることも可能かもしれませんが、さまざまな条件から、そうすることはできない場合もあります。価格があがったり、箱にちゃんと入らなかったりということがあるからです。

もしくはイラストを無くし、数字だけにすることもできるでしょう。また、イラストに重なるように大きく数字を乗せることもできるでしょう。

これにより、プレイアビリティはあがっていると思いますが、イラストをどうするのかという問題が出てきます。

イラストは世界観を演出するものだからです。 

 

では世界観とはなんでしょうか?

今回の完全日本版ペンギンパーティではドイツ版ペンギンパーティには無かった、ある設定が入っております。

引用

ペンギンたちのパーティは、ピラミッドを作って遊びます。自分のペンギンをできるだけたくさん、上手に乗せていきましょう。乗れなかったペンギンはシャチのいる海に落ちてしまうので、気をつけてくださいね! 

というものです。これが世界観です。

 

良いか悪いかは別として、ドイツ版ペンギンパーティの世界観ではなぜペンギンがピラミッドをつくるのか、なぜ乗せることが出来ないとマイナス点なのか説明はありませんでした。

ペンギンのパーティです。冷たい飲み物、新鮮な魚、大きなペンギンのピラミッドが必要です。

ライナー・クニツィア - ペンギンパーティ メビウスゲームズ翻訳)

説明が無いことが悪いという意味ではありません。
想像力を膨らますことも可能でしょう。

 

ディレクションには何かしら指針の設定が必要です。ですので、今回の指針それなりにリアリティのあるペンギンパーティ」がディレクションの判断基準になるからです。

 

・パーティらしいパーティをしてる。

・ピラミッドを作るそれなりの理由がある。

・ピラミッドが作れないとマイナス点になってしまうそれなりの理由がある。

・ペンギンはリアリティのあるペンギンである。

 

そういった事を指針から意識して、シャチチップを導入したことにより、結果「ペンギンがシャチに〜」というような感想が自然とでるゲームになりました。(実際、ペンギンたちは海に飛び込むだけで、あの世界ではペンギンが食べられるわけではないです)

こういった感想がでることを演出として考えてシャチチップを導入しています。マイナスの表現については後述しますが、いくつか考えておりその中でもわかりやすいと考えたことが理由です。

「うまくペンギンが乗せられなかった〜」という感想のほかに、ペンギンがシャチのいる海に落ちることで印象に残りやすく、いかにもマイナスな感じがするのではないかと考えたのです。

 

これはペンギンパーティがいかに失点をしないかというゲームなので、失点をしないようにするドキドキ感を過剰に演出するためにこのような流れを考えました。

 

失点をすることでペンギンがシャチのいる海で!(失点がわかりやすい)

かわいいペンギンにそんなことをしたくない!(ゲームのプレイに意欲を持たせる)

うまくペンギンをピラミッドに乗せるためにかんばるぞ!(勝利を強く目指してもらう)

わ~結局ペンギン海に落ちちゃたよ〜。(ゲームの結果の感想がわかりやすい)

 

というようなドイツ版よりも体験が増えたプレイ感になるのではと考えたということです。

 

そういうようなことが苦手な方もいるとはおもいますが、同時にわかりやすいとも思いました。

 

また、上記の理由でシャチを意識してもらうことを優先するために、マイナス点チップにシャチよりも目立ちそうな数字という要素を記載しない判断をしました。

もっともこれは、それぞれが1点と5点なので可能だったでしょう。

これは硬貨のルールと同等なので感覚的に理解できるからです。

もし元のルールで「小さいチップが1点、大きいチップが3点」というようになっていれば、数字を記載する、もしくは3点を5点にするということを検討したと思います。

 

 

ここまで長々と一瞬見ただけで誰でもわかることを書いていますが、と思わないでくださいね。

この例でアートディレクションはだいたいどんなことなのか分かっていただけたとおもいます。

また、グラフィックデザインには理由が必要であるということも分かっていただけたのではないかと思います。感覚でしているわけではありません。

 

ちなみにペンギンパーティの別の部分のディレクション部分の話をすると、ペンギンがそれぞれグラスを持っており、グラスがペンギンの色を表すようにしたのは、パーティの共通のアイコンとしてグラスがわかりやすく、かつシャンパンタワーのイメージがグラスにはあることで、積むということもなんとなく理解できるのではと考えたからです。これはアートディレクションの時に平行してペンギンがグラスを落とすマイナスチップという方向性も考えていた事も理由です。割れグラスでもまぁよかったかも。

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初期アートイメージ図にもグラスの割れたマイナスチップのイラストがある。

 

最後に、安心してください、ペンギンは生きてます。パッケージにも海から上がってるペンギンが書かれていますが、あのシャチはいいやつなんです。

ペンギンが海に飛び込むのはあの世界では酔い覚ましみたいな感じです。酔っ払いすぎて、ピラミッドに乗れなかったから海に飛び込む。シャチは多分叱ってるんでしょう。

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 プレイアビリティは演出の犠牲なってはいけない

では、実例を交えながらさらにアートディレクションについて進めていきましょう。

タンサンでグラフィックデザインを担当した、ひつじとどろぼうにおいて提案時の失敗例を取り上げます。

演出とは常にプレイアビリティがある程度担保された状態で行うべきであるという実例になります。(時としてプレイアビリティを作為的に減らすことにより、別の重要な演出を表現するということもありますが、それは例外的処置と言えるでしょう)

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ひつじととろぼうはPower9Gamesさんのゲームです。詳しくは→http://powernine.blog.fc2.com/blog-entry-65.html 

ひつじとどろぼうは放牧的なドラフトゲームで、このように道をつなげて街に繋いだりします。

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分かりやすいですね。

 

しかし当初、グラフィックデザインの依頼頂いた時に私は、目立つ為の目新しいヴィジュアルが良いのではと考え、このような提案をしてしまいました。

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マザーのようで、見た感じは面白そうに見える可能性はあります。

ただ、Power9Gamesさんは「ドラフトでカード回してる時には考える事が多いから、カードの視認性が少し落ちるだけで考える事が増えすぎて混乱してしまうかもしれない」ということで、この案は採用されませんでした。

これはアートディレクションの面から見て非常に正しい判断でしょう。

ドラフトゲームにおいて、手札にきたカードからひとつをチョイスして、隣に渡します。

ただえさえ悩みやすいドラフトゲームにこのように構造がすんなり理解できないカード(特に川など)がある場合、ドラフトに時間がかかったり、チョイスミスが増えたりすることでプレイアビリティが悪くなる恐れが高いです。

よく考えれば分かりそうなことですが、新しい見た目という誘惑に気を奪われておりました。

この後に、ディレクションの指針として、「放牧的であり、ドラフトが初めての人にもわかりやすく感じるようなグラフィックデザイン」を設定し、優しいタッチで道幅も大きめに取った、上記のようなわかりやすいカードデザインになりました。

 

さらにここで、カードのグラフィックデザインについてひとつ意図を説明しましょう。ひつじとどろぼうでは道はつながらない置き方をしても良いが、川は途中で切ってはいけない、という特徴的なルールがあります。そこで、カード中では川の色を強くし、目立つようにしています。なるべくミスした時に被害の大きい要素を目立たせることで、うっかりミスを減らせればと考えています。

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プレイングについてきちんと理解することがアートディレクションには重要であると言えるでしょう。

 

 

マザーのような道をつなげていく感じのヴィジュアルを効果的に利用できるゲームもあるでしょう。例えば、カルカソンヌのようにランダムで引いた1枚をどこに置くか、というゲームならば、実際に重ねてみて判断できるため、比較的わかりにくいデザインでも可能かもしれません。

 

 

 

 

 

 

プレイアビリティと演出を同時に高めるアートディレクション

プレイアビリティと演出を同時に高めた好例として、レジスタスの初版と二版が挙げられるでしょう。自身の例ではなく大変申し訳ないですが。

 

初版のレジスタンスでは全てカードで表現されていましたが、二版では例えばこのように変更されています。

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上列が初版のチームカード 下列が二版のチームタイル

上記のカードはレジスタンスというゲーム内で破壊工作ミッションに行くプレイヤーの選出の際に目印として利用するものなのですが、カードをタイルにすることで、他のカードと区別がつき、机の上が整理されるプレイアビリティが上がります。

さらに、分かりにくかったビルの標的を表すイラストを銃にすることで、リーダーから配られるゲームシステムやタイルをもつ重さなど、銃を持つ演出に変えています。

 

色も黒で目立ちやすく、かつ、裏面には銃が描かれておらず、ミッションに必要なプレイヤーを表現できるという点でも配慮が行き届いていると思います。

ミッションに行くプレイヤーを表現する際も裏面にすることで分かりやいですね。

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ほかにも 投票がやりやすくなっていたり

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参加人数ごとにボードが用意されているので、小さな表を参照しなくてよくなっていたりと、非常にプレイアビリティが高められていることが分かります。(4ミッション目の特殊感が薄まっているのが気になる所ではありますが……)

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もちろん、箱に収まるサイズであったり、目指す価格帯などという制約が予めあると思いますので、その範囲でどこまでの実装が可能なのか変わってくるでしょう。これほど簡単にはいかないのが現実ですね…。

 

制限を逆手にとってプレイアビリティを向上させるアートディレクション

また、もう一つの例として、コヨーテを例に見てみましょう。

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左が新コヨーテ、右が昔のコヨーテ

 

昔のコヨーテは手軽に楽しめるゲームルールでありながら、箱の大きさやハチマキを巻くという行為から手軽に遊ぶことの負担になっていると考えました。コヨーテのハチマキについてはgoogleの画像検索でこのように出てきます→https://www.google.co.jp/search?q=%E3%82%B3%E3%83%A8%E3%83%BC%E3%83%86+%E3%83%8F%E3%83%81%E3%83%9E%E3%82%AD&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0ahUKEwiA3JK2yODJAhUkJaYKHQT2BnAQ_AUIBygB&biw=2324&bih=1223

 

新しいリメイク指針では「手軽に立ったままでも遊べる」を設定し、価格をや大きさを抑える小箱にすることになりました。

小箱になることで、費用の面やサイズの面からハチマキを入れることはできません。

コヨーテからハチマキを失くすことは、従来のコヨーテファンにとってはマイナスでしかない変更です。あの馬鹿馬鹿しさの良さもよくわかります。

そこで、ハチマキを失くすということを好意的に見ていただける工夫を加えなければいけません。

ハチマキを失くすことが、プレイアビリティに繋がるように、カード裏をサマリーにしました。

オデコにつけず手に持っているから常にサマリーが確認でき、参照しながらカウンティングできるというアートディレクションです。

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これならばオデコにハチマキでつけない理由になると考えました。(一応、ハチマキの代わりのゴムバンドも売ってますが…→http://shop.tansan.co/items/1321755

 

サマリーをカードの裏面につけたことで、特殊なカードのルール説明がしやすくなり、プレイアビリティは向上したと言えるのではないでしょうか。

裏面を見るという行為によって表面の数字が見えないという効果もあります。

参考までにNGOさんにお渡ししたコヨーテのアートディレクションの資料をいくつか記載いたします。

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このアートディレクションでも変更点はいくつかありますが、大きな指針はずれていません。コヨーテがお手元にある方は比べてみてみてください。

 

 

 

演出を強調するためのアートディレクション

では次に演出の強調について実例を上げながら進めて行きましょう。

ただ、演出が効果的であるかどうかは感じ方の違いの幅が大きいため、プレイアビリティよりも効果がわかりにくい場合が多いでしょう。

ここでは、演出の意図を説明するに留め、効果についてはみなさまのご判断に委ねるということに致します。

 

ファブフィブのリメイクについてです。ファブフィブについてはコチラを→http://sgrk.blog53.fc2.com/blog-entry-2292.html

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リメイク後のカードですが、同じ数字でもドクロの数が増えていくにつれてカードに変化があることがわかると思います。

ただ、変化の度合いには強弱があります。

左上の数字の色と吹き出しの形が変化していくのはすべて共通ですが、ドクロが3つのものは背景が激しく変化しています。

ドクロの数は1個づつ均一に増えていますが、グラフィックデザインの変化の度合いはまるで最後だけドクロ4、5つのような変化です。

これは、ファブフィブというゲームは割と淡々と進んでしまうゲームなので何かハラハラする演出が必要だと考えました。その1つが、このグラフィックの変化の差です。

カードを引いて手札に来た時になにやらヤバそう!と思ってもらうことを意図してデザインに差をつけています。

ドクロの数が多いほどファブフィブにおいてはライフが減りやすいのですが

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この状況と

 

 

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この状況では

 

合計ドクロの数が同じなので、危険度としてはそこまで大きく違わないのですが(カード交換があるので、ある程度は違う)わざと大きく見た目を変えることで今回はヤバそうだという印象を与え、その後、ライフが減ると印象に残りやすくなるのではと考えて演出しました。印象に残ることでその後もプレイされる機会が増えるでしょう。

また、ドクロ3つが3枚揃った時のヤバさや、ドクロが1つばかりの時の安心さのようなものも、こういった大きな変化があるように設計することでより感じやすく出来るでしょう。

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ドクロ合計9

 

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ドクロ合計3

 

 

また、別のハラハラ表現として、ライフカウンターを単に数字だけにするのではなく

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こういうような死神が徐々に近づいてくるグラフィックをにしました。

 

 

まとめ

ここまで実例と共に見ていただいた皆様は、見ればわかることを説明しているだけ、と思う方もいると思います。

しかし、そこがアートディレクションの難しいところで、始まりは何も見ていません。

この難しさについては、13日目のyioさんの記事のケーススタディの例題をご覧ください。

note.mu

例題をみていただければ、何もない状態からアートディレクションを考えることの難しさがわかるのではないでしょうか?

 

今回はビフォーアフターがわかりやすいためにリメイク作品を中心に取り上げましたが、基本的には何もない状態から、見た目の想像をしつつ進めなければいけません。

みればある程度、直感的に理解できることばかりですが、設計段階では言葉や意図から表現を考える必要があります。。

 

アートディレクションを意識していない場合、プレイアビリティが悪くなったり、演出がチグハグであったりするでしょう。

実は遊びにくいという事に気がついていない場合も多いです。

それはなぜかというと差が見えないからです。そうならないためにも、普段からボードゲームの表現の意図を考えるようにすると良いとおもいます。

また、アートディレクションは誰かがわかっていれば良いというものでもありません。

全員がアートディレクションの意図を理解していなければ、あれ?ちゃんとプレイアビリティのことを考えてたのに…という不幸がおきてしまいます。怖いですね。

 

 

 

 

 (あっさー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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